くびの痛み

めまい・ふらつきとは

くびの痛みイメージ

くび(首もしくは頚部)の痛みは、多くの人が苦しんでいる症状ですが、その原因は複雑な要因が絡み合っています。
鎮痛剤や湿布だけでは簡単に解決しないのです。
頚部痛の原因となる疾患と病態について解説します。

頚椎疾患と中枢感作について

先ず、頚部痛の背景には頚椎の外傷や病気が存在することが多いことは当然です。
頚椎捻挫、頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、後縦靭帯骨化症などが代表的な頚椎外傷/疾患です。
しかし実際はこういった特別な外傷/疾患がなくても頚部痛が起きるのです。
つまり、頚椎の並び方が悪い方、生まれつき脊髄を納める脊柱管が狭いだけでも頚部痛の原因となります。特に最近若い人を中心に増えているストレートネック(俗にスマホ首)は頚部痛に悪影響があります。

当院では、頭痛や頚部痛を訴える患者さんには必ず頚椎の検査も同時に行っていますが、頚椎の並び方の悪い方が非常に多いことに驚きます。
そこで1つの疑問が浮かびました。頚椎疾患があっても、頚椎の並び方が悪くても、頚部痛が全くない患者さんもたくさんいることです。
この違いの原因は何であるのか?それは、中枢感作があるかどうかだということなのです。

中枢感作とは、脳が過敏状態になり頭痛や頚部痛(恐らく肩こりも)を非常に感じやすくなってしまった状態のことです。中枢感作の多くは元々片頭痛の患者さんが陥りやすい状態で、頭痛や頭痛以外の片頭痛症状(閃輝暗点やめまいなど)が悪化してしまいます。つまり反復性片頭痛や慢性片頭痛、鎮痛剤乱用頭痛などの状態です。
従って、頚部痛が長く続いている場合、中枢感作を解除する薬、つまり片頭痛予防薬の投与で頚部痛が改善するのです。

長く続いている頚部痛に対して、鎮痛剤を連用されている患者さんをよく見かけますが、これでは返って中枢感作つまり鎮痛剤乱用頭痛になってしまい頚部痛を長引かせることとなってしまうので行ってはいけません。
私も以前は筋緊張型頭痛という診断で筋弛緩剤や鎮痛剤を使用していた時期がありました。確かに首や肩の筋肉の凝りも頚部痛に関与していることは確かだと思いますので、首や肩の体操やマッサージ、整体治療などに一定の効果は期待できます。しかし、根本的な治療には片頭痛予防薬が有効であり、長期に鎮痛剤を連用は行うべきではないと考えています。

後頭神経痛について

突然片側の後頭部や後頚部の表面的な痛みを発症し繰り返します。ズキズキと鋭い痛みが間欠的に続き、頭皮を触ったり、後頭部の一部を圧迫すると痛みが起きたりすることも特徴です。
この疾患も頚椎の並び方の悪い方に多く発症するので、頚部の筋肉の過緊張による神経圧迫が原因ではないかと推測されています。また、ウィルスが後頭神経に感染して起きる場合もあります。
いずれにせよ、治療しなくても2週間以内で治癒に向かうことが多いので特別な治療は必要ありませんが、痛みが強い場合には薬を使用します。普通の消炎鎮痛剤が効かないこともあり、神経痛の薬を使用します。

後頭神経痛が長期に続く場合があります。これは上記の中枢感作の状態で、元々片頭痛がある方に多くみられます。片頭痛はこめかみの辺りの頭痛や目の周囲の頭痛が多いとされていますが、後頭部や頚部が痛む方や目の奥から後頭部/頚部にかけて同時に痛む方もかなり多くいます。後頭部や頚部も片頭痛の好発部位なのです。
後頭部/頚部の痛みが2週間を超えても治まらずに毎日続いたり、毎日でなくても週に1回以上の頻度で繰り返す場合には片頭痛予防治療が有効です。

椎骨動脈解離について

突然の片側後頭部、後頚部の痛みで発症する疾患で、脳卒中に含まれる疾患です。
椎骨動脈という、頚椎(首の骨)の中をとおって脳に入っていく血管の壁が突然裂けてしまう疾患です。
血管壁を貫いて出血するとくも膜下出血、裂けた血管が詰まってしまうと脳梗塞を発症しますのでとても怖い病気です。突然の頭痛/頚部痛に加えてめまいや嘔気嘔吐、顔面や喉のしびれや麻痺、複視や呂律不良、四肢の運動感覚障害、意識障害などで発症します。
しかし、血管が裂けただけで済む場合も多く、そうした場合症状は後頭部や頚部の痛みのみですので患者さんは歩いて外来にいらっしゃいます。

当院では、1か月に200人程度の頭痛を訴える新患がいらっしゃいますが、1~2か月に1人程度の割合で患者さんがみつかりますので、それほど珍しい病気ではありません。
確定診断にはMRI+MRAが必要ですし、くも膜下出血や脳梗塞となれば命に係わるので適切な診断と治療が必要です。手術が必要な場合もあります。
当院で発見された多くの患者さんは、後頭部痛や頚部痛のみで血圧コントロールと経過観察で事なきを得て頭痛/頚部痛も改善しています。

高血圧症について

高血圧症は原則的には無症状ですが、頭痛(特に後頭部痛や頭全体の頭重感)や頚部痛を自覚することも多いです。
血圧が上昇することで頭痛/頚部痛が悪化し、頭痛/頚部痛が続くために血圧が高くなるという悪循環が生じるのです。
適切な降圧治療と片頭痛予防薬を組み合わせることで、頚部痛が劇的に改善されることを多く経験しました。
頭痛や頚部痛が改善された後、血圧も正常化し降圧剤が必要となくなることも少なくありません。

当院における頚部痛の診療について

先ずは問診が重要で、発症の状態や経過などで頚椎疾患がありそうか?元々片頭痛があるか?鎮痛剤を連用しているかどうか?中枢感作がおきていそうかどうか?などを聞き取ります。

脳と頚椎のMRI+MRAと頚椎レントゲンを行います。
頚椎疾患/脳疾患の有無や頚椎の並び方の異常の有無、椎骨動脈の状態などを確認します。

治療は、外傷など短期的に済みそうな頚部痛にはロキソニンなどの消炎鎮痛剤や湿布などで対応します。
後頭神経痛の場合は、痛みが強く短期では解決できそうもない場合には神経痛の薬(リリカやタリージェなど)を使用します。
元々片頭痛がある患者さんや、痛みが2週間を超えて長引いている場合には片頭痛中枢感作を疑い、頚部痛に有効性の高い片頭痛予防薬(トリプタノール)を使用します。トリプタノールは神経痛にも有効なのでとても有用な薬です。

既に鎮痛剤を多めに服用している患者さんには、予防薬による鎮痛効果を期待し鎮痛剤は減薬していただきます。
高血圧もある患者さんには頭痛にも有効とされる降圧剤を併用します。
長時間頚部の前屈位を避けること、頚部や肩の体操やマッサージも有効な場合もあります。

立川脳神経クリニック

クリニック概要

Clinic

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脳神経外科 神経内科 脊椎脊髄外科 生活習慣病

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